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トウキョウサンショウウオ
トウキョウサンショウウオは”ヤマカジ”とか”ヤマッカジ”などと呼ばれて、親しまれてきました。谷戸田の水路や山奥の湿地などで繁殖活動をします。春先に産卵のため、湿地や水路に姿を見せます。2個1対の卵嚢(らんのう)を産みます。その愛らしい姿に、人々は命の温もりを感じ、大切に守ってきました。決して農作業の妨げになることは無かったので、人々に愛され続けてきたのです。しかし、時代の変化は、谷戸田を不要なものとして、放棄し、削り取り、埋め立てるようになりました。トウキョウサンショウウオは行き場を失ってしまいました。それでもわずかに残った湿地や水路で、懸命に生き続けていきます。川口の自然を守る会は、このサンショウウオの保護活動に取り組んでいます。
川口の自然を守る会  最終更新 2016−02ー03
2015−1−31に確認された卵のう
左の卵のう 2015−2−13の発生状態
2016年の情報
成体の出現 2016年2月1日 
初産卵 2016年2月2日 昨年は1月31日
成体の水場への出現日、産卵開始日とも、ほぼ平年並みです。

2016年(第18回)トウキョウサンショウウオシンポジウム開催
日時:2016年2月20日(土)午後1時より
会場:東京都立川市 トヨタドライビングスクール東京 ホール (2015年の第17回と同じ会場です)

参加無料、希望者は直接会場へお出でください
トウキョウサンショウウオとは
両生類 有尾目 サンショウウオ科 学名 Hynobios tokyoensis

トウキョウサンショウウオは両生類です。体長は9〜12pでオスのほうが僅かに小さいようです。産卵期に水場へ下りてきます。産卵が終わるとメスはすぐに陸地へ戻り、オスが暫く産卵場に残ります。しかし長くはとどまらず、オスも陸地へ戻っていきます。水場で過ごす期間は一ヶ月にも満たないのです。産卵期以外は陸地で生活していますが、その生態はほとんど分かっていません。雑木林の中で、やや地中深く潜って生活しているようですが、必ずしも落葉樹とは限らず、針葉樹や竹林、照葉樹の林であったりします。八王子市における産卵期は概ね2月中旬から4月初旬までです。川口ビオトープでの観察によれば、1月下旬から4月中旬まで産卵活動が見られます
陸上を歩く成体
水中の成体♂ 2011-02-20
 産みたての卵のう 2011-02-21 
トウキョウサンショウウオの生態

T 両生類と爬虫類の違い
両生類とは、水の中でも陸上でも呼吸できる生物の総称です。尾のあるものを有尾目、無いものを無尾目と区分します。両生類のうち、有尾目、すなわち尾のあるものが、サンショウウオとイモリです。無尾目、すなわち尾の無いものがカエルです。よく似た生物として、爬虫類があります。両生類が進化して、陸上生活するようになったのが爬虫類で、両性類は水中でも陸上でも呼吸できるのに対して、爬虫類は水中呼吸が出来ません。しかし、呼吸といっても、皮膚呼吸で大部分の酸素を取り込み、皮膚の表面を覆っている粘液が大切な働きをしています。乾燥してこのヌルヌルが失われると元気が無くなってしまいます。捕まえて、手でいじり回すようなことは止めましょう。水が無くなり、落ち葉や枯れ木の下に潜り込んでいることもありますが、この状態で死ぬことはありません。よほど苦しくなれば、水分を求めて、地中へもぐっていくこともできるからです。かなり過酷な条件下でも、逞しく生き残っていくしたたかさは持っています。
ワニは、トカゲは、ヘビは、ヤモリは・・・・・爬虫類です。
サンショウウオは、カエルは、イモリは・・・両生類です。・
U サンショウウオは水中で繁殖行動をする
 (1)サンショウウオの卵と卵のう
ンショウウオの繁殖行動は魚と同じように、メスが水中で卵を産み、それにオスが放精して受精が成立します。交尾という行動はありません。両生類の中には、モリアオガエルのように樹上であったり、シュレーゲルアオガエルのように、土の中や田の畦などに産む場合もあります。それは泡という形で、水環境を作り。そこに卵を産むのです。流れのない止水環境で産卵するものを止水性サンショウウオ、流水中の岩石の下などに産卵するものを流水性サンショウウオといいます。八王子では止水性としてトウキョウサンショウウオ、流水性としてヒダサンショウウオの存在が知られています。
 (2)産卵期と産卵数
 A 産卵期
八王子市の場合は早いもので1月末から生み出しますが、ピークは3月上旬になります。遅いものは4月上旬ということもあり、5月始めに産卵したケースもあります。
  B産卵数

オスとメスの合わせた数に近い数になりますから、卵のうの数を数えれば、成体がどれくらいいるかと言うデータにもなります。その総数は、まだ正確に把握されていませんし、正確に把握すること自体が不可能です。東京都全域での卵のう数は約6000個(3000対)位と推定されていますが、はっきりしません。八王子市川口地区について言えば、川口の自然を守る会の徹底した調査活動により、かなり正確に把握されており、1500個(750対)±30%と推定しています。しかし、毎年連続して産卵するとは限らず、また水環境が整わない場合は、産卵せずに、体内に吸収してしまうこともあります。
澄んだ深い水深での産卵
浅い水深での産卵
V 卵はどのようなものか
 (1)サンショウウオの卵は嚢(のう)という袋に入っている
卵は袋の中に多数詰まった形で産み付けられます。この袋に詰った卵の塊を卵嚢(卵のう)と呼んでいます。卵のうはすぐに水分を吸収して、膨潤(ぼうじゅん=水を含んで膨らむ)します。卵のうの中には、水が取り込まれ、孵化したオタマジャクシ(幼生)の養分が溶けています。その中に卵は浮いたような状態で人っています。卵のう内では、普通の状態でほぼに均等に分散します。ただし、両生類の全てが卵のうという袋を持つわけではなく、イモリのように、卵を一つずつ産むものもあります。卵のうはサンショウウオの場合、概ね半月状ですが、カエルは様々な形をとります。例えばヒキガエルは何メートルもの長さになり、紐のように見えます。
 (2)卵のうを2個1対で産む
サンショウウオやカエルのメスは卵巣を二つ持っています。産卵時には卵のうが二つ出てきます。膨潤したあともこの形は残り、卵のうは2個が1対になっています。1匹のメスと1匹のオスがいて、2個1対の卵のうが生まれるわけですから、卵のう数が生殖活動の出来る親(成体)の数と同じになります。卵のうが100対(200個)あれば、そこには、オス、メス合わせて200匹の親がいるという計算になります。
 (3)卵のうの中にはどのくらいの卵が入っているか
トウキョウサンショウウオの卵のうの中には、30〜60個くらいの卵が入っています。しかしこの数は親の成熟度や場所によって異なり20〜80位までの大きなバラツキがあります。左右で極端に数が異なることもあります。そこで、2個1対を合わせた卵の数をメスの一腹(ひとはら)と言うこともあります。一腹の卵の数は40〜160ものバラツキを持ちます。寒冷地ほど数が少なく、温暖地ほど多くなるという研究結果が出ています。このうち、3〜5%が生き残れば、生息数は維持されます。
 
W 卵が孵るとどうなるのか
 (1)卵から孵化した幼生の成長
卵は約40日ほどでオタマジャクシの姿になり、卵のうの中で動くようになります。そして卵のうの端の一方を破り、水中に出ます.そのあとは水呼吸をしながら、動物性のプランクトンなどを食べて成長し、手足が生えてきます。夏頃になると体長4.5センチほどになり、水呼吸用のエラが小さくなり、陸上呼吸が出来るようになります。このように陸上生活できる姿になったことを変態と呼び、水から出て陸に上がります。変態上陸は、日当たりのよいところでは8月ごろ、日当たりの悪い冷たい水の場合は秋までかかり、まれに年を越すこともあります。上陸してから親になって水場へ戻ってくるのには3〜5年ほどかかるようです。サンショウウオは生まれ育った水場へ戻ってくるという習性があります。
卵が孵化し卵のうの中で成長
卵のうから出て水中で成長する
X なぜサンショウウオと呼ぶか
 (1)サンショウウオの呼び名の起こり
サンショウウオの中で、最も大きなオオサンショウウオが西日本を中心に生息し、国の天然記念物なっています。このオオサンショウウオに山椒のようなニオイがあるから山椒魚と名づけられたといいますが、臭いの感覚や強弱は人によって受けとめかたが異なり、必ずしも当を得た呼び名とはいえないようです。オオサンショウウオ以外の小型のサンショウウオ、例えばトウキョウサンショウオにはこのような臭いはありません。
 (2)トウキョウサンショウウオという呼び名の起こり
トウキョウサンショウウオは西日本を中心に生息するカスミサンショウウオと識別が難しく、専門家でも外見上からは判別しづらいようですい。最新のDNA鑑定では識別できるようになりました。トウキョウサンショウウオとして世に出したのは、田子(たご)勝彌氏で、1931年にあきる野市草花で採取された標本からカスミサンショウウウオとの相違点を挙げ、東京都産であることからトウキョウサンショウウオと命名したようです。しかし、その根拠はあまり確かなものではなかったようです。このあいまいさから、愛知県産のカスミショウウオが長い間トウキョウサンショウウオと見なされていたほどです。

Y トウキョウサンショウウオの寿命
 トウキョウサンショウウオがどのくらいの寿命を持つか、正確にはつかめていませんが、20年飼育した例もあり、自然界でも20年前後はあるという報告が出ています(首都大学東京・草野保氏)
Z トウキョウサンショウウオの生息環境
 トウキョウサンショウオは主として関東地方の標高300メートル以下の丘陵地にある湧水や池、水田の水路、たまり水などで産卵します。それ以外のときは、周辺の雑木林の地下に潜って土壌生物などを捕食しているようですが、生態は今もって良くわかりません。溜まり水を止水(しすい)と呼び、止水性のサンショウウオと言うこともあります。この逆で、流れのある渓流で産卵するサンショウウオもあり、これは流水性のサンショウウオと呼ばれます。その代表的なものがヒダサンショウウオですが、これらについては別のページ、ヒダサンショウウオを参考にしてください。
[ サンショウウオの天敵
 自然界では成体に対して、モグラ、猛禽類のノスリ、サシバなどが天敵です。しかしこれらの天敵は自然淘汰の範囲内で、サンショウウオの存在を脅かすことはありません。タヌキ、アナグマなども天敵ですが、もっと深刻なのはイノシシとアライグマです。アライグマニについては対策がありません。イノシシは電気柵で防ぐことが出来ますが、人手と費用を考えれば、特定の場所以外に適用できません。イノシシとアライグマを放置すると、サンショウウオのみならず、両生類が絶滅するという極めて深刻な事態が予想されます。
幼生についての天敵はイモリ、アメリカザリガニ、カモ、水鳥の仲間などですが、特に深刻なのはカルガモの被害で、侵入を許すと、1羽、2羽でも、幼生は全滅します。

\ トウキョウサンショウウオの保護活動
 トウキョウサンショウウオは国のレッドデーターブックで絶滅危惧種に指定されましたが、これによって法的な保護義務が生じたわけではありません。地道な保護活動こそが大切です。
一時は開発による大きな問題がありましたが、天合峰、横沢入りの二大開発が阻止され、やや沈静化してきました。それに変わって、川口地区で最大の問題はイノシシによる谷戸の荒廃です。川口の自然を守る会ではこの対策に翻弄されてきました。そのための試行錯誤は今後も続くことでしょう。
もう一つ、当地を悩ませているものに盗難があります。ネット販売やペットショップで販売するための盗難は現実味を帯びてきています。
2010年のサンショウウオシンポジウムの大きな話題となっているアライグマとかラナウイルスの問題は当地では把握されていませんが、将来起こりうる可能性として、傾聴しておく必要があるかもしれません。
トウキョウサンショウウオの保護と観察
川口の自然を守る会で、2015年より始めた産卵地保護の実例をお伝えします。工事期間は2015年10月10日〜10月15日のまでの期間内の内、4日間でした。整備された池で産卵や幼生の発育などの基礎調査を行う予定です。実験室とフィールドでは、その生態が全く異なることがこれまでの経験でわかっています。これまで、フィールド調査は、この付近に多数生息するイノシシや、ゴルフ場排水の影響などがあり、連続的、継続的な調査が出来ませんでした。今回はゴルフ場の農薬の影響がない場所にイノシシ防護柵を設置し、トウキョウサンショウウオの生息が以前から確認されている場所を選定しました。また、大雨による産卵場所の流失などが全くない安定した水環境、土壌環境も確保されました。
あゆみ池 アズマネザサに覆われた湿地にあゆみ池を整備することにしました。その整備作業についてお知らせします。簡単な池のようですが、当会の15年にわたる各種のノーハウが詰め込まれており、大きな成果を生んでくれるものと思っています。この湿地には今年11対の産卵がありましたが、変態直前まで生育した幼生は日照りとイノシシの害によって、僅か1匹しか確認されませんでした。湿地は何か所ものイノシシのヌタ場が作られ、ごしゃごしゃのされてしまいました。ここにイノシシの防護柵を設けた保護池を作りました。
10月10日の作業 湿地周辺のアズマネザサ刈り取り
刈り取ったアズマネザサ
刈り取りをしない周辺のアズマネザサの茂み
姿を見せてきた湿地
10月12日の作業 10日の作業で刈り取ったアズマネザサの片づけと、新たに湿地周辺のアズマネザサの刈り取り、及び片付け
10日に刈り取ったアズマネザサを片づけた。
新たに池の周囲のアズマネザサを刈り取った
刈り取ったアズマネザサを全て片付けた
10月14日の作業 竹を切り出しイノシシ防護用の柵にする杭、40本を作った。1メートルの長さに切り、半分に割り、片方を尖らせた。湿地に倒れ込んでいる倒木や、湿地の中に埋もれている木や竹の倒木などを掘り起し、片づけた。
倒木や埋もれ木を掘り起し、片づけ
池の周囲にある無尽蔵の竹を使い竹杭を作る。長さ1メートル、二つ割にして先を尖らせる
10月15日の作業 杭打ち、ビス穴あけ ビスののねじ込み、土の撹拌、これにより腐食臭の除去
竹の杭に4本のビスを通し、針金を張る。高さは下から20、35、50、65センチ。4段に通す
柵の長さは50メートル。これでイノシシの侵入を防ぐ。アライグマやハクビシンには効果無し。
中央に枯損木の太いものを置き、流速を弱め、止水性を高める。
完成したまゆみ池。広さ50u(杭の内側)、水の満たされている面積20u、水深0〜8p、平均4p。この上に落ち葉が積り、絶好の産卵場所となる。
参考資料
計画、作業:川口の自然を守る会 五味。
作業日数及び時間 4日間、延べ16時間。
費用:2500円(ビス350本入り1箱、M4×19皿頭タッピングビス、1.6ミリビニール被覆針金100メートル×2巻)
使用した道具:草鎌、小鉈、大鉈、三本鍬、熊手、竹挽き鋸、木挽き鋸各一丁、充電式スクリュードライバー一式
今後の作業観察、調査予定
池の撹拌、底土へ酸素供給:水質浄化、
水温の測定:
10月20日 午前10時 気温17.5度、水温18.3度 
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