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天合峰のポピュラーコース

天合峰のポピュラーコースをご紹介します。


天合峰は複雑な尾根や沢が入り組んだ深い山で、地元の人でも一人歩きは難しい所です。でも、ここに紹介するコースは子供連れでも気軽に歩くことが出来ます。観光地ではなく、本当の意味の里山ですから、案内板など一切ありませんが、それだからこそ楽しめる里山の魅力を存分にお楽しみ下さい。春(4月)と秋(11月)がお勧めのシーズンです。地元住民の生活を乱さないよう、自然保護に充分ご注意下さい。山道のあちこちにイノシシ、マムシに関する注意の立て札があります。正規の道を歩いている限り危険はありませんが、道を踏み外さないように十分注意してください。川口の自然を守る会では、観察会をしばしば行っているので、トップページの通信欄からお問い合わせ下さい。

川口の自然を守る会 最終更新2013年12月20日
天合峰の案内図
さあ!東京の里山・天合峰を歩いて見ましょう

交通
アクセス
 京王八王子駅またはJR八王子駅のバスターミナルから川口経由武蔵五日市行、今熊(いまくま)行、上川霊園行きのいずれかにに乗ってください。途中の影沢というバス停で降ります。約 30分(430円)ほど掛かります。



影沢子育地蔵

 先ず子育て地蔵に参拝しましょう。 バス停から道路を横断し、進行方向にほんの少し歩くとこじんまりした地蔵堂があります。古いお地蔵さまと子供を抱いた新しいお地蔵さまが二体並んでいます。影沢の子育て地蔵として霊験があり、250年間にわたって、この地で子供の事故がないと言われ、地元の人は誇りにして花を絶やしません。いつもきれいに清掃されています。子供さんやお孫さんのいらっしゃる方は子供が健やかに育つよう参拝してみては如何でしょう。


影沢子育て地蔵尊 延享3年(1746)建立、縁日:8月24日
川口川の景観
 お地蔵さんに参拝したら、少し戻って、「西田橋」という信号で道路を横断します。そのまま真っ直ぐ南に進むとすぐに西田橋という橋があります。この橋から川の上流方向を眺めると、天気の良い日には奥多摩の山々が美しく眺められます。また左右の川の深みにはカモやアヒル、セキレイなどの姿を見かけます。また振りかえると背後になだらかな山が見えます。地元の人が三峰山と呼んでいます。秩父の三峰神社から眷属(お犬様)のお札を頂いてきて、山頂の祠に収めていたことからこの呼び名がつけられました。
西田橋から奥多摩の展望
奥多摩連山の主脈 左から御前山、馬頭刈山・大岳山
川口川の水鳥
カルガモの他に、カワセミやセキレイ等も姿を見せる
ホタルの棲む休耕田や梅林
 少し進むと十字路に出ます。ここはひとまず直進します。右手に梅林があり、更に進むと左手に休耕田の草原が広がりま。このあたりにはホタルが出るので、夏の夜は幻想的です。ホタルを採らないように地元の人は呼びかけています。ホタルは必ず見るだけの楽しみにしてください。しかし、最近はホタルがめっきり減っています。6月末〜7月初めごろに出ます
梅林

八王子最古の寺、長楽寺
 右手に寺が見えてきます。急な石段を登ると本堂の前に出ます。この寺は平安末期、文治3年(1187)の創建を伝えています。本堂は老朽化して近年立て替えました。真言宗智山派で医王山長楽寺と言います。ご本尊は室町時代に作られた不動明王ですが、その背後に見事な薬師如来像が安置されています。鎌倉時代中期の作で、都の有形文化財に指定され、八王子最古の仏像です。ただこの寺は住職が不在のことが多く、仏像は拝観できません。


医王山長楽寺 真言宗智山派
八王子最古の開創を伝える。開山僧・明玄法印
薬師如来坐像 東京都有形文化財
八王子最古にして最高の文化財
由緒深い白山神社と川口郷の展望
 本堂の左に古いお堂があります。ガードレールに沿って墓地の中を突っ切り、行き止まりから左に入ると登りつめた山頂に小さな社があります。これが白山神社で、かつてはこの地域の中心的な神社でしたが、いまは山上にひっそり立っているだけです。ここからは川口町の眺望を楽しみましょう。鎌倉時代、この辺りは藤原氏の所有する船木田新庄南川口郷として栄えていました。いま山上から眺めても、のどかで落ち着いた景観が楽しめます。

白山神社
白山さまと呼ばれて親しまれた
川口町の展望
眼下に見える川口町。平安時代の武蔵国川口郷中心地
別所から滝ノ沢へ
 白山神社周辺の集落を別所(べっそ)と呼びます。十字路まで戻ったら左に折れます。暫く進むと小さな橋があります。橋を渡ると道は突き当たります。突き当たったら左に折れます。左右の集落を滝ノ沢と呼びます。橋の下を流れている沢も同じ名前です。ここも大変に古い集落で、その名残を石仏などで知る事が出来ます。この辺りの沢にもホタルが出ます。
女たちの祈り
 左手を注意していると、ちょっと無粋な鉄骨の屋根に覆われた石仏が出てきます。お地蔵と庚申塔が並んでいます。どちらも江戸時代中期のものですが保存状態が良く文字や彫り込まれた像がはっきり見えます。特に庚申塔は良く見てください。いちばん上に月と太陽と雲、その下に青面金剛という手が6本ある神様、神様に踏み付けられた交合している猿、更にその下に見ざる、言わざる、聞かざるの三猿を彫り込んでいます。庚申信仰をユーモアたっぷりに表現しています。それと同時に興味深いのは石仏に刻まれた文字です。女性たちの手で建立された事が記されています。
庚申塔(左)と念仏地蔵
手入れの行き届いた稲荷神社
 左に休耕田が出てきます。その先に見えるのが稲荷神社です。いつ見ても周囲がきれいに手入れされています。大きな山桜があります。いつも氏子達によって手入れされています。山桜は日影にあるため、開花が遅く、4月中旬になってやっと開きます。

木立の中の稲荷神社、黄葉しているのはウワミズザクラ
山肌のシラキのの黄葉
サワガニのいるセセラギ
 離れていた沢が急に近づき、セセラギの音が聞こえてきます。サワガニやホトケドジョウなどが棲んでいます。生物は大切にしましょう。子供さんたちは特に観察したら必ず川に帰してやるよう習慣付けましょう。ここから山道になります。沢も渓谷のような感じになってきます。

この付近では珍しい岩石の露出した谷を渡る
深山の趣き
 左に沢のセセラギ、右手に杉の林が広がり、急に山の雰囲気になります。ここからが天合峰の核心です。沢が合流します。右から出てくる沢が天合峰から流れ出した本沢、左手から出てくるのが金毘羅山から流れ出す不動谷戸です。この辺りには季節によって色々な野草が咲きます。山地性の植生なので採取して持ちかえっても絶対に根付きません。採取厳禁です。必ず守ってください。ツバキが咲き、アオキが鈴なりになります。
眼下には八王子の里山とは思えぬ深山の趣きが広がる
奇怪な水神様にびっくり
 急登に息が切れてくる頃、眼前に奇怪な石仏が姿をあらわします。二体並んでいます。小さいものは江戸中期の安永年間の作、大きいものが明治時代の作です。水場を守る水神さまですが、正しくは倶利伽羅不動と呼ばれています。不動明王の化身と言われ、不動明王の持つ左手の縄を竜の姿に変え、竜が不動明王の右手の剣を抱きかかえたものです。地元滝ノ沢に残る言い伝えではマムシ除けに作られたと言います。この付近にはマムシが多く、噛まれて死ぬ人が多かったので、マムシ除けの願いを込めて作ったところ、それ以降、滝ノ沢ではマムシに噛まれて死ぬ人が無くなったといわれています。今では商売繁盛などを祈願するする人が多くなっています。
不動明王の化身、倶利伽羅不動に守られる山と谷
見事な山桜の大木
 この登山道の圧巻は何といっても山桜の大木です。幹廻り3.7メートル、大人3人が手を伸ばしてやっと囲えるほどの太さです。4月の第1週に満開になります。その美しさは言葉にたとえることが出来ません。始めて見た人は「桜とはこんなにも美しいものなのか」と感嘆の声を上げます。赤い葉に純白の花びらをちりばめて、背後の杉木立ちの深い緑と鮮やかなコントラストを見せます。遥かに見下ろす谷は幽玄さを湛えて、心に深く染み渡ります。
八王子一の桜の大木、幹回り3.7メートル
ホッとする鳥居
 つづら折れの急坂にあごが上がり始めた頃、急に辺りが明るくなります。良く刈り込まれた登山道の左右には山桜やツバキがいたるところに目の前に広がる豊かな自然の楽しさを満喫してください。目の前に朱塗りの鳥居が現われ、展望が開けます。秋にはコナラの紅葉が目を楽しませてくれます。夏にはオカトラノオが白い花穂を垂れます。
金毘羅神社で記念撮影をしては?
 一気に山頂へ上り詰めると、これも朱塗りの金毘羅神社があります。団体で来た人達には絶好の集合写真のポイントです。雑木林の木の間越しに目指す天合峰が微かに見えてきます。春の桜と椿、秋の紅葉を充分にお楽しみ下さい。登山道には季節によってさまざまな野草が花を開きます。お奨めの季節は春です。
山上の金毘羅神社鳥居
山頂の金毘羅神社
金毘羅山の展望 黄葉の雑木林
金毘羅山の展望 こならの紅葉
残念ですが・・・ここで引き返してください。天合峰へは別のルートから登ります。
 ここから天合峰まではわずかな距離ですが、尾根道が整備されるまで、イノシシの危険や、道に迷うこともあるので、引き返しましょう。下りながら見る景観も捨てたものではありません。山を下り、T字路まで来たら、左折してください。前方の圏央道の巨大な橋げたを潜り抜けると、やや変則的な十字路に出ます。ここを左に折れます。左側に民家が見えますが、ここが十内入(とうないり)という古い集落です。
さあ、天合峰へ!最後の登りに挑戦しましょう!
子授けの神様、金精稲荷
民家の少し手前に急な石段があります。この石段の上に古びた社があります。金精稲荷と云い、この神に祈願すると子供が授かるという言い伝えがあります。男性器に似た縄文時代の石棒がご神体ですが、近年破損して原形をとどめていません。かつては遠方からも祈願に訪れる人が多かったという事です。近親などに子供が授からない人がいたら、お参りしてみてはいかがでしょう。再び石段を下りて、元の道に戻りましょう。
金精稲荷
里山の神髄、農の風景:上の原台地
石段のすぐ先に、また上に登る坂道が現れます。これを上ると、広々とした台地に出ます。ここでは二軒の専業農家が野菜などを作っています。縄文時代から人びとが住みつき、住居址や石器、土器等が出土し、これらの夥しい土器は、道路普請に使ったという伝説じみた事実がありました。その名残は今もあり、道や畑の中に土器片が散見されます。畑を抜けると、左右に手入れされた心地よい雑木林や栗林が広がります。

農の風景 畑作 
農の風景 畑作 ナス畑
栗林と雑木林
畑を抜けると栗林が左右に広がり、右手に手入れされた雑木林が見えてきます。栗の収穫意外に、落ち葉が大切な堆肥として使われます。ここも里山らしい景観です。

冬の栗畑
秋の雑木林


急登を経て山頂へ

雑木林を抜けると、展望の悪い急な上り坂になります。やがて坂道を抜けると、左手に天合峰の山頂があります。海抜300メートル、樹木が大きくなり、展望はあまりよくありませんが、かつては360度展望が開けていました。初夏のころには、ヤマツツジがきれいに咲きます。山頂には三等三角点があります。ここが川口町の1番地で、地元にとっては特別の意味があります。川口の村社であった日枝神社の所有地です。川口地区の道路標識を作ったときは、この山頂まで担ぎ上げ、一番地に立て、それぞれの場所に戻して建立しました。昔は山頂に大きな桜があり、ここで行う花見には、昔から住んでいた男性しか参加できず、婿に来た人は、下働きしかさせてもらえなかったそうです。この山の名前は「天合峰」と書いていますが、古くは天狗峰と書いていたようです。山頂が天狗の鼻のように出っ張っていたからだと言われています。しかし、テングミネと呼ばれたことは無く、テンゴウミネと音では呼ばれていました。天狗を、お天狗様(おてんごうさま)と呼んで畏敬していたのが今に伝えられているのでしょう。戦時中は、この山の松の大木が切り倒され、根を掘って、根から松根油(しょうこんゆ)を採取し、飛行機の潤滑油に使い、麓には松根油を製造する工場もありました。切り倒された松の大木を大砲と見誤った米軍は、あの凄惨を極めた八王子大空襲に際しても、天合峰山麓の川口町一帯には高射砲を恐れてか、爆弾を落とさず、一軒の罹災もありませんでした。終戦と同時に進駐してきた米軍は、真っ先に天合峰へ駆け登りましたが、もちろんそこには大砲などありませんでした。昔を知る古老の話では、往時の山頂付近にはオキナグサ(東京都では絶滅)が一面に咲いていたと言います。山頂に立って、そんな過去の姿を偲ぶとき、この山は、時代と共に姿を変えていますが、子子孫孫まで残し、語り伝えていかなければならないと思います。
ケルンの積まれた天合峰山頂
秋の一日、天合峰に憩う
自然の豊かさを満喫してみてはいかがでしょう。
ミヤマシキミの実
カマツカの紅葉と実
アオハダの黄葉
天合峰を後に幻境の里へ
同じ道を引き返し、圏央道の見える十字路を左に折れ、、山裾に沿って進みます。左手のクヌギの林には、イチリンソウ、ヤマブキソウ、アズマイチゲなどが咲き、右手には畑が広がっています。やがて水田や茶畑が見えてきます。ここが釜の沢という古い集落です、左手に集落を見ながら右に曲がって進みます。このあたりも長閑な田園風景が広がっています。
釜の沢の田園風景
近年、住宅が増えていますが、それでも、まだ長閑な田園風景は残っています。釜の沢の田園風景を楽しみましょう。釜の沢は天合峰から流れ出す最も大きな沢の呼び名ですが、見える範囲は三面張りで、沢の面影はありません。
釜の沢の水田や茶畑の風景
幻境の里・森下
釜の沢の集落を下ると、川口川に架かる釜の沢橋に出ます。この橋を渡ると、川岸に庚申塔が見えます。地元では賽の神と呼ばれ、ここで盛大などんど焼きが行われます。秋川街道を渡ると、その先に森下のバス停があり、帰りはここからバスに乗るのが良いでしょう。ひとまず、ここでは信号を渡らずに、手前の歩道を右に進みます。上川東部会館前に出ます。ここに幻境碑があります。島崎藤村などと共に、明治のロマン主義文学の先駆者であった、北村透谷が、この地の秋山国三郎と親交を結び、この地を幻境と呼び、三日幻境という作品に残しました。北村透谷の幻境については下記ページをご覧下さい。ここでは省略します。
                                    北村透谷の幻境
幻境碑
どんど焼き
賽の神(庚申塔)

天合峰ポピュラーコースのご紹介は以上です。

このコースは歴史、民俗、信仰、農業、自然などが混然一体となった里山周遊コースです。季節によってもさまざまに色彩や姿を変えます。
案内を希望される方は、下記へご連絡ください..。お問い合わせはメールにてお願いいたします。

メール: 川口の自然を守る会

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